素直の向こうがわ




それから数日経った、クラスでの必修科目がその日最後の授業だった日、私と河野は自然とそのまま一緒に教室を出た。


クラスメイトは、もう完全に私たちのことに気付いているようだった。

こそこそと話している様子はたまに目に入ったけれど、基本的には大人な子ばかりだ。特に何かを言われたり、根掘り葉掘り聞かれたりすることもなかった。
そもそもみんな自分のことで精一杯の時期だ。


校門のところまで来たところで、河野が立ち止まった。
先ほどから何かを何度か言おうとしてやめる、ということを繰り返していた。
それを不思議に思っていたけれど、ようやく言うことに決めたようだ。
その顔がこちらへと向けられた。


「今日はまだ時間も早いし、うちで勉強する? それで、おまえさえ良ければそのまま夕飯食ってく?」

「……え?」


少し緊張した面持ちの河野の眼鏡の奥の目が、私の答えを待っている。
想定になかったお誘いに、つい思考が停止してしまった。


「嫌なら別にい――」

「行きます。行かせていただきます!」


私は咄嗟にそう声を張り上げていた。気合いが入り過ぎて思わず前のめりになる。


「渉がまたおまえに会いたいとか言ってたから。あいつ、喜ぶよ」


河野はそれに少し面喰ったのか、早口でそう言うと視線はもう前を向いていた。