真里菜と薫のニヤニヤとした顔が気持ち悪い。
「河野、フミの家に行ったよね?」
「う、うん」
あの日のことがまた蘇って来て勝手に顔が緩みだす。
そう言えばこの二人から私の家を聞いたのだと河野が言っていた。
「フミが休んだ日の河野の慌てぶりを見せてあげたかったわ」
「え?」
「私たちもどうしたんだろうって心配してたんだけど、1時間目終わった頃には河野が『何か連絡来てないか』ってすっ飛んで来たよ。それで、フミから何の連絡もないし、これまでこんなことは一度もなかったって言ったら血相変えちゃって。フミのとこ両親離婚していてお母さんいないし、お父さんも仕事忙しくてほとんど家にいないっていう情報も付け足してやったら、『あいつの家を教えろ』って。ね」
薫が真里菜に同意を求める。
「そうそう。フミの家知ってるから私たちが行くって言ったんだけど、自分が行くって言い張って。もしかしたら家で倒れてたりするかもしれないから、とかなんとか言ってそのまま出て行っちゃった。あの男が授業サボりですよ。お姉さん」
真里菜が更に顔をニヤつかせ、私の肩を腕でぐりぐりと押して来た。
「あの無表情冷静男のあんなに焦った姿は、超レアものだったわ」
河野はそこまで私のことを心配してくれたということだ。



