どうして私が傷付くとかそんなことになるのか、意味が分からなくて混乱した。
だから、やっぱり薫と真里菜を巻き添えにして騒ぐことしか出来なくて。


「もう、帰ろうよ」

「そうだよ、フミ」

「まだ8時じゃん。もう少しいようよ」


何だかとても一人でいたくなかった。
でも、そんな駄々をこねてみても、あと10分で時間だと知らせる電話がカラオケルームに鳴り響く。


「それにしても、あの河野があんなこと言うなんてね。まあ、私たちにとっては都合良かったけど」


仕方なく駅に向かって歩いている時、真里菜が呟いた。
その声が耳に入ると、また意味の分からない痛みが胸に走る。


「でもさ、なんでフミはそんなに河野に喧嘩腰なわけ? 今日のなんて、完全にあんたの方が酷かったのに。『無表情、しかめっ面眼鏡』ってあんなに大きな声で叫んで」


薫が私の表情を探るように見ている視線に気付いて、慌てていつものおちゃらけた表情を作った。


「喧嘩腰も何も、そもそも最初があれなんだから仕方ないでしょ。それにしてもあの無表情ぶり、人間なの? 人間型ロボットとか?」

「たしかに。フミの暴言を真後ろで聞いていても、河野の表情まったく揺らがなかったもん」


そう言って笑う真里菜に合わせて笑ってみせたけど、どこか乾いたものになっていた。