「あ、あの、私、お風呂に入ってない気がするんだけど、臭くないかな」
近くにいる河野を見ていたら、こんな時にそんなことが気になった。
「変なこと気にしてんじゃねーよ。とりあえず、もう一度熱を測るんだ」
汗が気になって布団の下の自分の服を見た。
制服のスカートと白いシャツのままだった。
でも、リボンは外されていた。
確か学校に行こうとしてたからブレザーも着てたはずなんだけど、それは着ていなかった。
あれ……。自分で脱いだっけ。
体温計を探していた河野の背中に向かって、思わず叫んでしまった。
「あの、私の服は?」
その声に、少しムッとしながら河野がこちらを向いた。
「ブレザーは脱がせた。リボンも俺が取った。でも、それ以上は何もしてないし見てもいない」
「そ、そか。そうだよね、うん。それより、来てくれてありがとう。うち、どうやって分かったの?」
河野がブレザーやらを脱がせてくれているところを想像して顔から火が出そうになり、その想像を消し去ろうと慌ててお礼を言う。
そして、続けて素朴な疑問をぶつけ、体温計を手にもう一度傍に来た河野を見つめた。
「ほら、測って」
渡された体温計を大人しく受け取り脇に挟む。
「何の連絡もなく突然休むし、電話にもメールにも答えないから心配になっておまえの友達に聞いたんだ。あいつらも相当心配してたよ」
そこまで言うと、河野は一つ溜息を零した。
「昨日は本当にびっくりした。おまえの家に来てみたら鍵は開いてるし、開けてみたら玄関先でおまえは寝込んでるし」
ほっとしたような、心配していたようなそんな表情の河野に、胸の奥がきゅっとなった。



