おそるおそる傍へと寄る。
制服姿の河野は、壁にもたれ、足は片方だけ膝を曲げそこに腕を置いて座っている。そしてそんな河野の横には薬やら水やら果物なんかが並んでいた。
心配して来てくれたってことだよね?
ずっとついててくれたの?
その寝顔を見ながら、胸がじんじんとして来る。
いつもなら絶対触れられない河野がすぐそこにいる。
自分の部屋に河野がいることが信じられない。
そっと河野の膝に置かれていた腕に触れようとして、腕時計が目に入る。
その文字盤は4時を指していた。
4時にしては暗すぎない?
そう思ったら、その文字盤の中にある日にちの表示で、その4時が夕方の4時ではないことに気付いた。朝の4時だ。
河野をここに泊まらせてしまったのだ。
どうしようと思ったところで、もうどうしようもない。
眠る河野の前で一人声も掛けられずにいたら微かな声が聞こえて来た。
「あ……、松本」
その瞼をゆっくりと上げ、そう呟いたかと思うと突然身体を起こして声を上げた。
「おい、もう大丈夫なのか? ずっと起きてようと思ってたのに、今俺寝てたよな」
「う、うん。でも、もう大丈夫みたい」
「で、なんでおまえはベッドから出てるんだ。早く布団に入れ」
そう言うと、無理やり布団に押し込められた。
「でも、もう大丈夫だよ。身体も随分楽になった。だから……」
「まだだめだ。昨日、相当な高熱だったんだ。あのまま下がらなければ病院に連れてこうと思ったんだぞ。でも夕方には呼吸も随分楽になってたから様子を見ようと思ってたのに、自分が寝ちまうなんて」
ベッド脇に座り込んだ河野の心配そうな顔が私に向けられた。



