自転車を引きながら戻って来る河野をただ眺めた。

河野の目には、私はどんな風に映っているのだろう。
こんな私でも、河野は本当にいいのだろうか――。

さっきの航とのやり取りが頭を過る。


「じゃ、行くか」


その残像に河野の姿が重なって、切なくなる。


どうして私の傍にいてくれるのだろう。


人の気持ちなんて、本当に分からないことだらけだ。
分からない中手探りでいる。


好きになればなるほど不安になる。
そして、もっと知りたいと思う。


もっと河野に近付きたい――。


茜色の空に染められた河野の背中を見ていたら、何故だか泣きたくなった。