図書室に入る光が少しずつ薄暗くなっていた。
六時間目の授業の後の時間なんて、ほんのわずかなものだった。
「悪い。俺、もう帰らないと。渉が待ってるから」
「そうだね。じゃあ、行こうか」
机の上のものを急いで鞄へと入れる。
二人で図書室を出た。
二人で歩く校内での視線も前ほど気にならない。
「やっぱり、図書室だと声あんまり出せないから教えづらいな」
河野のその言葉に、心が真っ先に反応する。
それって、やっぱり一緒に勉強するのをやめたいってことかな。
確かに河野の勉強がはかどっていたとは到底言えない。
それに、この日は朝から河野が少し素っ気ない気がして不安が増してくる。
やっぱり、何か思うことがあるのかな……。
「急いでるなら今日は真っ直ぐ家に帰って」
校舎を出ると、さらに空の色は濃くなっていた。
寂しい気持ちを覆うように私は何でもないことのように言った。
「大丈夫だ。今日から自転車にしたから、いつもより早く家に着ける。自転車取って来るからここで待ってて」
そう言うと、河野は校舎脇にある駐輪場へと走って行った。