「まあ、こいつらに最初からレポートを真面目に書く気なんてないだろ」


ずっと腕を組んで黙っていた眼鏡男が私たち3人をちらりと見て、嘲るように言い放った。

この2週間、眼鏡男が私に声を掛けて来たことは無い。
でも、こうやって掛けて来る言葉はやっぱり冷たいもので、私の心をまたざわつかせる。


「ええ、そうですよ。最初から目的が違うんだから別々に行動しよう。集合だけ一緒にいれば先生にもばれないでしょ? それが一番合理的」


気付けば私はそう言ってしまっていた。
もう、これ以上あの目を見ていたくない。


あの目は――。本当に、嫌い。大嫌い。


「フミ、ちょっと――」


さすがに薫が私をたしなめようとしたみたいだけれど、眼鏡男がそれを遮った。


「いいよ、そうしよう。こっちがアンタたちに付き合う必要もない。その代り、最初と最後の集合だけはちゃんといろよ」

「え? 河野君、それでいいの?」


生徒会長らしからぬ発言に他の男子が慌てている。
規則を守るべき生徒会長が、決まりを破ってまで別行動することを選んだということに心の奥底がギシギシと軋む。

最初に言い出したのは私なのに、アイツのことを悪く言ったのは私の方なのに、そんなことも忘れて危うく傷つきそうになった。

そんなの、まったくのお門違いなのに。