振り向いた瞬間、振り向いたことを後悔した。
すぐに前に向き直し、無視して図書室へと歩く速度を上げた。
「待てって。冷たいな」
「私には、あんたと話すことなんて何もないから」
「待てよ」
そんな私にお構いなしに、航が私の肩を掴んで来た。
「おまえ、生徒会長と付き合ってんだって?」
肩を掴んだまま私の前に回り込み、行く手を阻む。
そんなことがもう航の耳にまで入っていることに、気が重くなる。
「あんたに関係ないでしょ」
近い距離に立つ航に嫌悪を感じ、その横をすり抜けようとした。でも、そうはさせてくれなかった。
「関係あるでしょ。俺、元カレだし?」
ニヤッと口角を上げたその表情に、心に鳥肌が立つほどの冷たいものが走る。
「今度は、ああいうのがお好みなの? それで、あいつに合わせてそんな風に外見変えたりしたわけ? ケナゲだね」
じわじわとその距離をさらに詰めて来て、しまいには渡り廊下の手すりまで追い詰められた。
「でも、おまえはすぐにあいつじゃ物足りなくなるよ。外見変えたって、おまえが淫乱なことには変わりないでしょ?」
もうすぐ触れそうなところまで顔を近づけられて囁かれる。
私は思わず硬く目を瞑った。
「やめてよ。もう私に構わないで。放っておいて!」
私は勢いに任せて航を突き飛ばした。
頭の中で航の言葉が鳴り響いてる。それをかき消したくて大声を出した。



