素直の向こうがわ



どうってことないって感じで言われて、私はますます焦る。

河野だって受験生だ。それだけ成績が良ければ、きっととんでもなく難関な大学を志望しているはずだ。


「でも、河野だって勉強しないと。私の面倒とかいいから」

「一緒にやれば、問題ないだろ?」


首を傾けてこちらを見ている。

そんな顔で言われたら、それを断る強い精神力は私にはない。


それって、放課後も一緒にいてくれるってことだよね――。


それを、一体どうすれば拒否できよう。


弱い私で、ごめんなさい。


心の中でそっと謝る。



そして――。


河野の傍にいるために、河野に少しでも迷惑をかけないように。
私が出来ること。


私は決めた。

河野のキズが少ないうちに。一刻も早く。


その日の午後、一目散である場所へと向かった。
駅前にある美容院だ。


「今すぐお願いします!」


この時の私の形相に、美容師さんもさぞびっくりしたことだろう。