「ごめん、ごめん。それより、早く食べよう」
私は誤魔化すように、愛情たっぷり特製弁当の蓋に手をかける。
でもいざ開こうとすると緊張した。
こんなに気合いの入ったお弁当見たら、河野は引くだろうか。
急に不安になって来る。
でも、思い切って蓋を開けた。
「……すごいな」
いつもの、無表情さに少しだけ笑顔が混じり、嬉しくなる。
「食べて、食べて」
「美味い。相変わらず美味いな」
早速卵焼きを口に運ぶと、河野がそう言ってくれた。
「良かった」
すぐ隣に河野がいる。そして私が作ったお弁当を美味しいと言ってくれる。
これは現実でしょうか。
誰ともなく問い掛けたくなる。
でも、また、すぐに周囲の視線が気になった。
まただ――。
こちらをじっと見つめては口を手のひらで覆いながらひそひそと何かを言っている。
それが一人や二人じゃない。学校帰りと同じだ。
そして、私はようやく気が付いた。
私じゃない。河野を見てるんだ。
河野が生徒会長だということをすっかり忘れていた。
全校生徒がその顔を、姿を知っている。クラスメイトどころの話じゃない。
生徒会長の隣にいる女として、私は見られているだけなんだ。
そんなことにも思いが及ばなかった自分の馬鹿さ加減に呆れる。
クラスメイトからの視線しか考えていなかった。
私と河野が並んでいる姿を想像する。
そう、自分でだって以前思っていた。
『まるでギャグだ』って。
急に他人の視線が気になり出して、思わず俯いた。



