素直の向こうがわ



二人で歩けば駅までの道のりも、ほんのわずかなものに感じる。もう視界に駅が入って来てしまった。

もう少し二人でいたかった。

そう思ってもそれは無理な話で。
河野だって早く帰って、家事やら受験勉強やらをしなければならないだろう。


「ここまで来てくれてありがと」


私は、しおらしくお礼を言う。

河野といる今の私は、以前と全然違う人間になっちゃってる。
それが恥ずかしい。河野もそのことに気付いているのだろうと思うとさらに気恥ずかしくなる。


「うん」

「じゃ、じゃあ、また明日」


そう言って手を振り河野に背を向けると、もう一度声がした。


「松本」


こちらを真っ直ぐに見つめる河野の顔が、少しだけ緊張しているように見えたのは、私の気のせいだろうか。


「メアドと番号、教えろよ」

「そ、そうだよね」


急いで河野の元へと戻る。

二人で携帯電話を向かい合わせてアドレスを入れた。
どうやらLINEはやっていないみたいだ。それがなんだか河野らしい。

こんなやり取りでさえ、本当に付き合っているみたいで、嬉しさで胸が一杯になる。