「昨日は悪かったな。おまえが悪いわけじゃねーのに。おまえはただ頼まれただけだろ? なのにおまえに怒ったりして。今更だけど……」
「え……?」
河からの突然の話題になんのことだか分からなくて河野を見上げる。
「ハチマキ」
「ああ……」
昨日、脇坂さんのためにハチマキが欲しいと言った時のことだ。
あの時の河野の目を思い出す。
確かに怒りに満ちた目だった。
「あれは、完全に俺の八つ当たりだ。悪かった」
八つ当たり……?
なんだかよく分からなかったけど、「大丈夫」だと答えておいた。
なんだか河野は最近こうやって謝って来ることが多い。
そういうとこ律義というか真面目というか、筋が通らないことはいやなんだろうな。
「あの、それで、お弁当のことなんだけど……」
ちょうど脇坂さんの話になったので、この流れの中でしか聞くチャンスがないと思い口にしてみた。
河野は察したような表情をして前を見る。
「最初の一回きりで断った」
「そうだったの?」
「なんで、意味もなく他人に弁当なんか作らせるんだよ」
表情を変えずに淡々と言っている。
「だったら、私もだめかな。また、作ってもいいかな?」
河野の言葉に急に不安になる。
それがそのまま私の声や表情に表れてしまったのか、河野がはっとしたようにこちらに顔を向けた。
「あ、ああ。でも、いいのか?」
「うん。作るの好きだし」
あの時、私が嫌になって脇坂さんに押し付けたと思っているのだろうか。
そうじゃないってことが伝わればいいなと思った。



