素直の向こうがわ




緊張しながらも、河野の隣へと歩みを進める。
そして私が隣に来たら、河野はまた歩き始めた。


『一緒にお昼食べなよ』


ぼんっと、この日の昼休みに真里菜と薫からけしかけられた言葉を思い出した。


ここは当たって砕けろの精神だ。


そう腹を括って思い切って言ってみた。


「あの!」


大きくなった自分の声に自分で驚く。
河野が少し驚いたように、その横顔を私の方に向けた。


「あ、明日だけどさ、お昼一緒に食べない? 中庭で」

「ああ」


それってオッケーってことですよね?


言葉は短いけど、河野の目が少しだけ優しげに見える。

言ってみて良かった。

こうなってみると、単純なものであの二人に感謝している自分がいた。


そう言えば、お弁当……。河野のお弁当は、脇坂さんが作ってるんだ。


今笑顔になった自分の顔が急速に難しい顔になっていくのが分かる。

そんな私を少し心配そうに見ている顔がそこにあった。