まだどこか現実のこととは思えない心地で、河野の後ろを歩く。
こうやって河野に声を掛けてもらって一緒に帰るなんて。
自分の想像を超えていることが起きているのだ。
ぼーっとする頭でただ歩いていたら、校門の前まで来てしまった。
確か、河野の家は駅とは反対方向だったはずだ。私は駅に向かわなければならない。
一緒に帰ると言ってもここまでか、なんて思って「じゃあ……」と言いかけたら、その声に被せるように河野が言葉を放った。
「駅まで行くよ」
「でも、それじゃあ遠回りになるでしょ」
「一緒に帰ろうって声かけたのは俺なんだからいいんだよ」
そう言うと、またさっさと歩き出した。
あっという間にその背中が遠くなっていて慌てて追いかける。
その時、周囲の視線に気が付いた。
下校時間帯の学校周辺は、当然のように帰宅する生徒で溢れている。
ちらちらと明らかに私を見ている。
私は部活にも入っていなかったし、委員なんてものとは無縁の高校生活だった。
だから知り合いもそんなにいないし顔も知られているとは思えない。
見た目が派手だから視線を向けられて逸らされるなんてことはしょっちゅうあったけど、こうやってじっと見られることはなかった。
少し考え込んでいると、前を歩いていた河野がこちらを振り返った。
それが、私が隣に来るのを待っていてくれてるのだと知る。



