素直の向こうがわ



薫と真里菜が「明日からは絶対にフミとはお昼は食べない」と宣言した。


自分たちは気を遣って彼とじゃなく私とお弁当を食べているくせに……。


その日の放課後、どうしたものかと頭を悩ませながら帰り支度をしていると隣から声がした。


「おまえ、今日、なんか予定あんの?」


思わずその声の方に振り向くと、河野がすぐそこに立っていた。


「あ、は、はい」

「予定あるってこと?」

「いや、そうじゃなくて、ないです」


何、私、敬語になってんの。
昨日はあんなに一緒に笑えたのに。


「……ぷっ。おまえ、いくらなんでも緊張し過ぎだろ」

「べ、別に緊張なんか」


笑いを堪える河野にむっとして、鞄に手を戻す。


「なら、一緒に帰る?」


その言葉に思わず周囲を見回す。まだ、教室にはクラスメイトが数人いた。
でも、河野は特に気にする様子もない。


「……うん」


河野を見上げる。

そんな私に「じゃ、行くか」と言って、河野は廊下へと向かって歩き出した。

私も慌てて立ち上がると、教室の前の方にいる薫たちが視界に入った。
二人揃ってニヤニヤしながらガッツポーズをしている。

恥ずかしくなって口パクで怒ってみせてから、少し距離の出来た河野の背を追い掛けた。