素直の向こうがわ




中庭で待っててもらっている真里菜と薫のところに急いだ。


「遅かったじゃん。どこ行ってたのよ」


私の姿を認めた真里菜が声を上げた。
いつものベンチで、その真里菜の隣に座った。


「ごめんごめん。それでなんだけど、二人にちょっと話があって――」


この二人には伝えたいって思う。河野のことをちゃんと。


「何よ、そんな緊張した顔しちゃって」


薫が不思議そうに私の顔を覗きこんで来た。


「実は私、昨日、河野に勢い余って好きだって言っちゃった」


そうだ。あれは完全に勢いで言ってしまったのだ。
あそこに河野が戻って来なければ、この気持ちを伝えることが出来たとは到底思えない。
感情の昂ぶりのままに、気が付いたらこの口が勝手に言っていた。


「……は? え? マジで?」


真里菜が手に持っていたサンドイッチを膝に落としていた。


「あ、落ちたよ――」

「それで? それで、河野はなんて?」


私の言葉は完全に無視して、真里菜が前のめりに身体を寄せて来る。


「あ……、うん。俺も……って……」


語尾はどうしても小さくなる。自分でこんなこと言うのは、本当に恥ずかしい。


「えーっ!」


さっきよりも大きい声で騒がれて思わず身体を引く。


「どの顔で? あの顔で?」


質問がかなりおかしいけど、その気持ちも分かる。
私だって未だに実感を持てずにいるんだから。