「は……?」
この人、何言ってんの? 意味が分からないんですけど。
「あんた、頭おかしくなった?」
自分の耳に入って来た河野の言葉に身体が拒否反応を起こす。
そんな事実を素直に受け入れられるほどの自信は持ち合わせていない。
ただ口をパクパクとさせ、目を激しく瞬かせた。
「確かに、おまえのこと好きになるなんておかしくなったのかもな」
そう言って笑う河野の表情に今度は釘付けになった。
『どうして』という言葉が脳内を激しく舞っている。
想像すらしたことない。まず、あり得ない。
「でも、本当のことだ」
つい表情が険しくなった私に、河野が真顔になって言った。
「……私のこと好きになるとか、あんたも馬鹿なの?」
私は未だに信じられなくて、信じてしまうのが怖くて、少し震えた声になってしまった。
「おまえほどじゃねーけどな」
私を見つめてくれるその目が優しく細められるから、信じそうになってしまう。
「泣き過ぎだろ」
そう言って、ハンカチを取り出し頬に残る涙を拭い取ってくれるから、これが現実だと思いそうになる。だから、どうしても顔がほころんでしまう。
嬉しくて恥ずかしくて。



