「笑ってるところ見ただけで勝手に好きだってことに決めつけるとか、おまえ馬鹿なの?」
聞き覚えのある私を馬鹿にするときの言い方。
でも、呆れたように笑う河野の表情は、どこか優しげで私は混乱する。
「へ……?」
だから、気の抜けた声を出してしまった。
「おまえの今の顔、ほんと、間抜け」
「なっ……」
眼鏡の奥の瞳がとても楽しそうに見えて、さらに私一人が混乱に陥る。
「おまえ、俺のこと好きだったんだ」
「う……」
さっきから私、呻き声しか上げていない気がする。
楽しげな河野に悔しくなるけど、反論すら出来ない。
この状況が一体何を意味しているのか全然分からなくて、早くこの会話を終わらせてしまいたくなった。だから、最後の悪あがきをした。
「だから、聞かなかったことに――」
「できないよ」
「……なんで」
「俺も、おまえと同じ気持ちだから」



