そこには、少し心配そうな顔をした河野が立っていた。
どうして、こんなところに河野がいるのか。
私は驚いて、慌てて水道を止めた。
「え? どうして……?」
「ずっと顔色悪そうだったから」
背の高い河野を見上げると、輪を作って首に掛けられていたハチマキに思わず目が行く。
「だ、大丈夫だよ。平気」
「そうか。なら、いい」
「あ、あの!」
短い言葉を残して立ち去ろうとしていた河野を咄嗟に呼び止めた。それと同時に激しい鼓動で苦しくなる。
振り返った河野の眼鏡の奥の目が無言で私に続きを促している。
「今日の体育祭終わった後、話あるんだけど教室で待ってていい?」
私の言葉に、河野があからさまなほどに驚きを露わにした。
言葉で表されたわけではないけれど、その表情が一瞬にして強張った。
でも、そんな表情をこれ以上見ていられなくて畳みかけるように言った。
「遅くなってもいいから!」
そこまで言うと、河野が少しの沈黙の後私の目を見て言った。
「分かった」
これでもう後には引けない。



