「あるんじゃないの? まあせいぜい二年までだと思うけど。そんなこと考えてんの」
薫の冷静な答えが返って来た。
私にはそんな経験がなくて、今まで考えたこともなかった。
河野のハチマキを自分がもらう図を想像してぶるぶると頭を振る。
そんなこっぱずかしいこと出来るわけがない。
あの子だから、恥ずかしげもなく出来ることだ。
少しずつ照りつけていた太陽が傾いている。
体育祭の終了時刻も刻々と迫っていた。
一番最後の種目である選抜リレーまでプログラムあと3つと迫っていた。
終わりの時間が迫って来るとともに自分の胸が息苦しくなってくるのが分かる。あまりの息苦しさに吐き気までする。
何度も躊躇ってしまう弱い自分が嫌になる。
胸の内側からドンドンと激しく打ち付けて来る。
一人頭を冷やしたくて、クラスメイトが座っている席から離れ、グラウンドの脇にある水道場へと向かった。
顔が濡れるのも構わずに勢いよく出て来た水を飲む。
冷たい水が喉を通り胸まで届くようだ。
『絶対に自分の心と反対のことはしちゃだめだよ』
薫の言葉が突然胸に浮かぶ。
蛇口が並ぶコンクリートに手を掛け、俯いたまま目を閉じる。
違う。そうじゃない。大丈夫ーー。
必死で言い聞かせるように心の中で呟く。
「大丈夫か? 具合悪いのか?」
突然降って来た声に驚いて、顔を上げた。



