素直の向こうがわ



「松本さん、何番?」

「5番だけど……」


クラス委員の女子に聞かれて、その紙に書かれた番号を伝えた。


「5番は……河野君のとこの班だね。じゃあ、早速、見学ルートを話し合ってくれる?」


何でもないことのようにそう言うと、さっさと次にくじを引いた子に指示を出していた。

手のひらの白い紙きれをぎゅっと握り締める。


何が、『さすがに二度はない』だ。

なんの悪戯なのか。こんなの誰も得しない。
関わらずにいたいのに。
きっと眼鏡男だって嫌に決まってる。私だって絶対にイヤ。どうして……。


まだこの現実を認めたくなくて、呆然とした気持ちで薫と真里菜のほうを振り返る。

二人も私をじっと見ていた。

でも、その顔がただの『興味津々』といったようななんの緊張感もないもので、じわじわと怒りがこみあげて来る。