「迷惑なお願いだって分かってます。でも、他にお願い出来る人もいないんです。中学一年の時からずっともう五年も打ち明けられないまま河野先輩のこと見てました。せっかく普通に私と接してくれているのに今更気まずくなったりしたらと思うと、どうしても出来なくて」
今にも泣き出してしまいそうな脇坂さんに、私まで泣き出したくなる。
「迷惑とか、そういうことじゃなくて――」
「お願いします! もしダメだったとしても、その時は私、すっぱり諦めますから」
このまま私が断ってしまったら、脇坂さんは何も言わないままなのだろうか。
河野はどうするのだろう。河野は脇坂さんに想いを告げるつもりはないのだろうか。
あのしかめっ面の無表情を思い出す。
お互いに言わないまま?
もし、私がここで引き受けたら、このもどかしい二人を結びつけてあげられるのだろうか?
河野の想いを成就させることが出来るのだろうか?
でも――。
「でも、やっぱり――」
「お願いします。これが最後のお願いですから」
必死に頭を下げる脇坂さんを見ていると、河野が脇坂さんに見せた笑顔がふっと頭に蘇った。
声を上げて身体全体で笑ってた。
河野の本当の笑顔……。
「……分かった。でも、ハチマキもらえたら、ちゃんと脇坂さんの口からちゃんと気持ちを伝えて」
そう言ってしまっていた。
言ってしまった後もこれが正解なのか不安で仕方ない。
でも、「出来ない」と言えなかった。
河野が笑えるなら、それは私も嬉しい――。
そう思うのに激しく騒ぎ出す胸。どうしようもなく痛みだす。
あまりに激しく心臓を内側から叩かれているようで、思わず胸を押さえたくなる。



