それからは、河野は毎日お昼休みは生徒会室へと出かけて行った。
体育祭が近いからだろう。
そのことにホッとする。さすがに、あの子の作ったお弁当を食べる河野を見るのは辛い。
でも、その気持ちのそばから心に乾いた風が吹く感覚から逃れられなくて嫌になる。
そういう時は、定期入れを見て心のうるおい補給をする。
こっそり忍ばせた河野からもらったカード。
この一枚がどれだけ私を元気にしてくれるか分からない。
だから、私はその分だけ河野が幸せになるのを陰ながら願う。
そして、体育祭前日がやって来た。
これまでの二年間、体育祭にやる気を持って参加したことなどない。
一番楽な競技を選び、そして最低限の責任として参加はする。そういうスタンスだ。
今年も基本的には変わらないつもりだけど――。
この日の帰宅は一人だった。
真里菜は彼と久々のデート。そして薫はお母さんと何やら予定があるらしい。
下駄箱で靴を履きかえていると、一度だけ聞いたことのある声で呼ばれた。
「松本さん」
その声に、少しだけ気が重くなって振り返る。



