それには答えずに、河野が無言のまま一つの紙袋を差し出して来た。
「な、何?」
「この前からずっと渡そうとしてたけど、タイミング悪くて渡せなかった。だから今日また弁当箱返す時に一緒にって思ってた。でも、もうそれもなくなったから」
そう言って私の手に押し付けて来た。
「だから、これ、何?」
「弁当のお礼。じゃあ」
河野はそう言うと手に持っていたお弁当箱を自分の席に置き、廊下へと出て行った。
「何よ、これ」
私の手に載せられたその紙袋の中には、綺麗な薄紫色をした包装紙に包まれた箱が入っていた。
一人取り残された私は、訳が分からなくて混乱しながらその箱を取り出す。どうやら何かのお菓子のようだった。
包装紙にはリボンがかけられていて、そこに一枚のカードが引っかかっていた。
『いつも手の込んだものありがとう。これからも楽しみにしてる。
追伸 でも大変になったら遠慮なくいつでも言ってくれ』
それは、相変わらずの角ばった字。
「なんなのよ、これ……」
昼休みのクラスメイトの声で賑やかな教室の中、涙を零しながら立ち尽くした。
「だから、こんなのあんたのキャラじゃないってば……」
勝手に流れて来る涙を必死で拭う。
どうしてこんなに泣けて来るのか分からなくて戸惑うだけだ。



