廊下でのやり取りは当然こちらには聞こえない。
でも、何を話しているのかは分かっている。
脇坂さんがお弁当を渡して、河野があの無表情を崩して少し照れたりしながらそのお弁当を受け取る。
私、河野に感謝されちゃうんじゃないかな。それはそれでいいかも。
そう思ってみて胸に何かがチクチク刺さる。
しばらくして、河野がいつも私が渡していたお弁当箱を手にこちらへと戻って来た。
怖くてその顔を見られない。
でも、あまりに避けるのも不自然だ。
普通に、普通に――。
そう念じれば念じるほど不自然になって行くのも知らずに、一人バカみたいに笑いながら河野に話掛けた。
「早速だね! 生徒会の仕事で昼集まることも多いって脇坂さんに聞いたからさ、それならってことで脇坂さんにお願いしちゃった。でも、今日は生徒会の仕事ないの?」
でも、そんな私を完全に無視して無表情に輪をかけた無表情さで私を見ていた。
「生徒会は明日から。それより……。脇坂に作らせるなら、前もって言えよ」
その声はここ最近は聞くことのなかった低くて冷たい声で、必死に作った笑顔も呆気なく消え失せる。
「え……、あ、驚かせようかって話してて。ごめん。心の準備が出来なかったよね。ごめんね」
そんな顔をしないで。
そんなにあの子との違いを見せつけないでよ。



