「フミ、どうしたの? あんたの知り合いにあんな子いたっけ?」
真里菜が不思議そうに、私と二年のフロアに戻って行くあの小さな背中を交互に見ている。
「あの子、生徒会の子じゃない? あの子が何でフミに用事?」
薫の言葉に、私は顔を俯かせる。
口を強く食いしばった。そして表情をしっかり作ってから顔を上げた。
「ああ、脇坂さんって言って二年生の子。なんか河野のこと好きらしくて、私が彼女かどうか聞きに来た。だから正直に違うって言って、ついでに河野のお弁当箱渡して来た。代わりに作ればいいじゃんって」
普通に言ったつもりだったけど、やはり顔が不自然になってしまっていたらしい。
私のそんな顔を見るなりそのまま二人に中庭へと引っ張って行かれた。
「ちょ、ちょっと。これから五時間目始まるじゃん!」
二人に両腕を掴まれていたから、まったく力で敵わなかった。
引きずられるようにして連れて来られて、ベンチに座らされた。
九月の空はまだまだ夏の残り香が漂っている。真昼間の太陽は容赦なく照りつけて来た。
「さっきの話、どういうこと?」
薫と真里菜の間に挟まれて逃げ場もない。
「どうって、さっき言った通りだよ。あんなおとなしそうな、か弱そうな子がわざわざ三年のとこの、それも私みたいな女のところまで来たんだよ。それって相当でしょ? それに、河野だって私からもらうよりあの子の方が嬉しいに決まってる」
「はあ? バカじゃないの?」
私が捲し立てるのを一蹴するように真里菜が叫んだ。



