その場では話しづらそうだったので、廊下を曲がったところにある特別教室の前まで移動した。
近くで見れば見るほど可愛い。色が白くて黒目がちな大きな瞳が私を捉える。
「それで、話って……」
「あの、松本さんは河野先輩の彼女さんなんですか?」
「はい?」
突然の質問に面食らって変な声を出してしまった。
「毎日松本さんが河野先輩のお弁当作ってるって聞いて。それで、あの……」
「えっと、脇坂さんだっけ? その、脇坂さんは、河野のこと好きなの?」
「え? そ、それは……」
その表情で丸分かりだよ。
私みたいな見た目が派手で、そのうえ先輩で、それでも確認せずにはいられないほど河野のことが好きなんだよね。
「私は彼女なんかじゃないよ。河野が私みたいなの彼女にする訳ないじゃん」
「でも、お弁当……」
「ほら、河野いろいろ大変そうだから、隣の席のよしみでついでに作ってるだけ」
そう言ったら、みるみるうちにその表情を緩めて行った。
「突然こんなこと、ごめんなさい。私、中学の時からずっと河野先輩のこと好きで、それで、河野先輩が女の子からお弁当もらってるのなんてこれまで見たことなかったから、私、いてもたってもいられなくなって」
顔を真っ赤にしながら必死にそんなことを言う脇坂さんは、本当に『女の子』だ。
なんだ。河野、両想いなんじゃん。
「じゃあ、脇坂さんがお弁当作ればいいんじゃない? あいつだって、私からもらうより脇坂さんからもらう方がずっと嬉しいと思うよ?」
取り繕う笑顔とは裏腹に、また痛む胸。
もう、お願いだからこの痛み止まって。
「え、でも」
「ちょうどここにあいつのお弁当箱あるし。明日突然渡してビックリさせれば? がんばんなよ。ね?」
「は、はい」
そうだよ。その方が河野も喜ぶ。



