次の日の朝、お弁当を作る時の気分が重くなった。
そもそも私がお弁当を作って良いのだろうか。
もし、あの子が河野の彼女だったら……。
あ――。
そのことを考えていなかった。
勝手に河野の好きな人だと思い込んでいたけれど、もしかしたら彼女だってこともあり得る。
彼女だからこそ、あんな風に無防備な笑顔になるんじゃないか――。
キッチンに並べた食材が急に色褪せて見えた。
でも、作らなくていいと言われた訳ではない。そう思いなおしてこの日もお弁当を作った。
お昼休みが来るのが、少し怖かった。
ずっと考えていた。どうしても彼女のことが気になってしまう。
あの可愛らしい柔らかい笑顔が何度も脳裏に浮かぶ。
「あのさ……、河野って彼女、いる?」
だから、お弁当を渡す時、確認せずにはいられなかった。
差し出したお弁当を受け取ろうとしていた河野の手が止まる。
「……なに?」
椅子に座る河野が私を見上げた。
その目は驚くような、どこか気まずそうな目だった。
でも、質問の意味を理解したのかぼそっと言った。
「いないけど」
「そ、そっか。ごめん、変なこと聞いて」
私はそそくさと河野の席から離れた。
いないということは、河野の片想い中ということか。
片想いの気持ちなら私にも分かる。
河野のあの笑顔を思い出して、また胸が痛んだ。
あの笑顔、失くして欲しくないな――。
心の中で呟く。
河野が傷つかなければいいな。



