素直の向こうがわ




結局、怒鳴られた日以来、眼鏡男とは言葉を交わしていない。


最初のうちは、怒鳴られたことがあまりに衝撃的でいろいろと意識したけど、二週間も過ぎるとどうでもよくなってきた。


隣にいようがなんだろうが、赤の他人だ。


それまでだって同じクラスにいたというだけで、顔も名前も知らないような関係だった。分かり合えるような共通点もない。


「では、遠足の班を決めます」


6月中旬のホームルーム。
教壇にはクラス委員の男女が立っていた。


「女子3人、男子3人の計6人で一つの班とします。それぞれでグループを作って、女子と男子の組み合わせはくじとします」


女子3人で好きな人と組んでいいなら、そんなのすぐに決まりだ。

私と薫と真里菜。

高1の時同じクラスになってからずっとつるんでいる。私にとって一番の友人だ。
しっかりものの薫と、女子力高くてちゃっかりしてる真里菜。
唯一私が笑えるのは、この二人といる時だけだ。


男子は誰だっていい。
今のクラスに特に仲の良い男子はいない。空気の読めない真面目男じゃなければ誰と組んだって同じだ。