車でどれくらい走っただろう。

外の景色は巻取られてしまったモノクロフィルムのように

私の視界から通り過ぎて行った。

灰色の街だ。

吐く息も白い。

そういえばここに来るまで、礼司との思い出ばかり思い出していた。

外の景色とは裏腹に、色鮮やかで、温かいものだった。

「礼司。。。」

綺羅は呟いた。

頬には冷たいしずくが流れていた。

車を止めて、近くの堤防に行くと港があった。

そこで綺羅は足元に暖かいぬくもりを感じた。

「ミャー」

小さな白い毛の長い猫だった。

逃げるわけでもなく、近くで毛繕いまで始めた。

しばらくみつめていると、

誰かが、

「ミルクー?」

と、呼ぶ声が聞こえた。

足元でくつろいでいた猫は、急に耳をピンっと立て走って声のする方へ行ってしまった。