「無理して笑わないでっ。
私は無理して笑う楓より、
前の楓がいいよ。前みたいに笑っててほしいよ…。」
「………前って何…。」
さっきの楓とは全く違う人のような声に楓莉は
少し驚き、抱きしめている腕の力を緩めた。
楓は少し勢いをつけて、楓莉の肩を押した。
キャラメル色の髪がなびく…。
「前ってなんだよっ?
お前にはわかんないんだよっ。
お前はただ笑って生きてて、
俺は何で…。」
「…。」
楓莉の顔が曇っていく。
それに気づいた楓はしまったという顔をした。
少し、焦ったような声で、
「ごめん、楓莉。
今日はここ使っていいから。」
