「…受けたら死ぬと言った覚えは無い。私が宣告した寿命は、手術を拒み、未処置の場合のものだ。」



「クゥン…。」



目をゆっくり開き、小さな右前足で顔をこする子犬。

アルフは、シャンテの胸に子犬をそっと置いた。



シャンテの表情が和らぐ。




「本当に…かわいいね…。アルフ…手術は…痛いよね…?あたし………痛いのは…嫌。それに…とっても怖い…。」



ペロペロと、子犬がシャンテの顔を舐め回す。




「ふふ…くすぐったいよ…子犬ちゃん…。」



「…死ぬかもしれない恐怖は、確かに耐え難いものだ。だが、手術は死を先延ばしできる手段でもある。勇気を持て…シャンテ。受けるというならば、君の命は私が保障しよう。」



そう語りかけながら、子犬の頭を優しく撫でるアルフ。




「クゥーン。」



甘えるような声で、子犬は鳴いた。



ササーッと春の夜の風が吹いた。




「それ…本当…?」



「本当だ。」



「手術…頑張ったら…子犬ちゃんを…もらってもいい…?」



「受けると約束するならば。」