イリアは、誰かに呼ばれたような気がして、不意に振り返った。
「イリア…どうかした?」
「えっ?」
「泣いてるよ…。」
「あ、あれっ…?なんで、あたし泣いてるの…?」
イリア自身も気付いていなかったようだ。
エマに指摘され、慌てて手で涙を拭う。
「何か悲しいことあった?恋人の自分に話してごらんよ。」
「何言ってんの、エマ。あたし、そういう趣味は無いし…。それに、あたしの好きな人はっ!あたしの好きな人は…あれっ?」
「どうしたのさ?」
エマに聞かれても、きょとんとして数秒固まるイリア。
「イリアの好きな人は…誰?」
「おかしいよ…思い出せないの。名前も…顔も…声も…全部。」
「そもそも、イリアに好きな人なんか居た?自分、聞いたことないんだけど…」
「居なかった…っけ…?」
エマは、さあ知らないと言うように、首を振るだけだった…。


