「ターゲットって…あのお母さん…?」
レリックは、すぐ斜め前の綿菓子屋にいる女性を指差す。
五歳くらいの二つ結びの女の子と、七歳くらいの茶髪の男の子に綿菓子をせがまれている。
「おかーさん!綿菓子。綿菓子~。」
「ママ!僕も!僕も~!」
お母さんと呼ばれている四十代の女性は、仕方ない子達と苦笑しながら、代金を払っている。
「そうだよ~。じゃ、行ってくる…」
ガシッ!
「ちょっ…あんた、何すんのよっ!?」
イリアは、驚きと怒りの入り混じった声を上げた。
…レリックが、悲しげに目を伏せ、イリアの右腕を掴んだからである。
「……て。」
蚊の鳴くような小声。


