「最期だから選ばせるとしよう…。あんたは…どんな死を望んでいるのか?」



暗い路地裏。
二人の者が対峙している姿が、街灯に照らし出されている。



一人は小太りの中年男性。
両手を前に突き出して、「助けてくれ…!」とか怯えた声で喚いている。



もう一人は…青年。
黒いフード付きコートを頭からすっぽりと羽織っており、顔はよく見えない。
右手には柄が長く刃先が鋭い大鎌。
背中には、体を裕に支えられるほどの黒くて大きな翼。




「助けてくれ、か…。しかし、これはあんたの寿命だから、私にはどうすることもできない。…観念するのだな。」



「ひ、人殺しぃ!!」



「人殺し?それは違うな。私達は、任務を遂行しているだけであって…と。無駄話はここまでにしよう。」



青年は、おもむろに大鎌を振り上げ…




「うわあああ…!!」



「…さよならだ。」



ザシュと斬音を立て、大鎌は男性の腹部を切り裂く。
物言わぬ体は、ドッとアスファルトの地面に崩れ落ちる。





青年は…というと。
大鎌にべっとり付いた血を、青色のハンカチで拭き取り…。




「あと二人、か…。」



バサッ…バサッと翼をはためかせ、その場から飛び去って行ったのだった。



路地裏には、鮮血で赤く彩られた“中年男性だったもの”が残った…。