「俺は、大好きな幼なじみが
目の前で泣いているのに
涙を拭うことも、背中を擦ることも
……できない …無力な男だ
望むように、名を呼んでやることも
……できない
だって……俺は、幼なじみに恋心があって
どんな過去があっても
夫婦に、家族になりたいんだ
だから…… 一緒に泣くしかない」





不甲斐ない


こんなにも、彩華が苦しんでいるのに



何も出来ないなんて





「っつ…いたぁ」


「どうした!」


「触るな!っうういてて…頭が痛くて
大丈夫……すぐ治まるはず
ごめん
平助
家族になりたいけど
これじゃあ無理
平助に触られるのも怖いんだ
ごめん 横になるから」



「晴太 巾着袋どうした?」


「ごめん 燃やした
ごめん ごめんね」








何度も 〝ごめん〟って言いながら

部屋に入っていった







謝りたいのは、俺だ



こんなになるまで気づかなかった


記憶を無くした時


彩華が怯えていた理由を


ちゃんと知る努力をしていたら


2度も襲われることなんてなかった



嫉妬して


傷つけることもなかった





「一歩前進だと思うぜ」


ニヤリと土方さんが笑った


は?って感じで、見やると


「やっと自分から言えた
ため込んでたものを少し出したんだ
きっと、他にも我慢してるぞ
だが、聞き出すんじゃねぇぞ
言えるまで待ってやれ」




土方さんには、敵わない

わかっていたんだ



「はい 待ちます」