目を丸くした匡輔がひどく狼狽えている。
それだけじゃない。
着ていたはずの衣服も、下着さえも身に着けていない。
おまけにどこか違和感のある女のそこの付近には、シーツに赤く染みを作っていた。
何も事態を飲み込めていない。けれど、予想しうる答えは、一つ。
「……な、何もない、ですよね……?」
知識だけは豊富な二十八歳。
初体験では血が出ることは織り込み済みだ。
痙攣したかのような、わずかな震えは何が理由がわからない。
理解が追い付かずに、事実をはぐらかす一言を突きつけた。
「……んなわけねえだろ。見てわかんねえのか。血、出てるだろ」
大体なあ、と続いた言葉は、右から左に抜けてしまっていた。
万全な後処理はシーツに血の染みを残さないらしい。
ティッシュか何かで拭えば問題ないとつらつら重ねる言葉は勉強になるものの、鼓動がバクバク高鳴っている。
女性の月のものとは比較にならないほどの少量の赤い滲みは、もう何年も出していない鼻血くらいの量だな、なんて考える柚衣子は、へにょりと困ったような笑みを浮かべている。
ベッドのまわりをきょろきょろと見渡すと、身に着けていた衣服が散らばっている。
慌ててそれらを手繰り寄せて身に纏えば、いなくなった自分の座っていた箇所には、皺と、赤い染み。

