「…話せよ」
「え…っ」
抱きすくめられた躯を、ゆっくり解放した奏弥。
そっと顔を上げると、そこには
優しい瞳で、あたしを見詰める
奏弥の姿があった…。
「てか、泣いてるし」
「っ…」
そっと頬に添えられた、奏弥の大きくて綺麗な手。
溢れる涙を、彼の親指が、優しく拭ってくれる。
「…なんか、オマエの笑顔は
自分を…隠してるように、見える―…」
…ずっと、思ってた。
咲姫の笑顔は。
…しっかりと張り付いて剥がれない、
全てを丸ごと、覆い尽くす
まるで、仮面のようだと…。
この時、俺は。
もう咲姫を、ターゲットの相手として、見ていなかったのかもしれない。
…心から。
その瞳も、唇も。
寂しそうな微笑みも。
何かに堪える、力強い涙も…
全部、俺のモノにしたいと、
そう思っていたんだ――…。

