「おはよ。」
朝の教室。
まだ登校している人も少ない七時半。
あくび交じりに彼は言った。
「おはよう。今日も早いんだね、水野君。」
眠たそうに眼を擦っている彼にそういうと、「宮川もじゃんか。」と言われる。
確かにそうだ。
朝七時半から学校に居る人なんて、委員会活動がある優等生か朝練のある運動部の子ぐらい。
そのどちらでもない私たちはきっと校内でも数少ない早起き組。
早起き組、と言っても早く学校に来て何もしていないわけではない。
「ねー宮川、ここ分かる?」
水野君が広げているのは数学の参考書。
塾で買ったものなのだろうか、丁寧な解説があるのにもかかわらず彼は頭を悩ませている。
「あー、それはね。」
中学二年の時に習った連立方程式の利用。
長ったらしい文章問題は、面倒だけど割と得意。
