「あ、そーだ、春山にお金返さなきゃ」

放課後、思い出したわたしはポケットに入ってたハイチューとお金を一緒に小さな袋に入れた。

春山、ねえ。

どこにいるんだろ。

あ、バイク!

私はバイクがあるか確認しに行った。



バイクのとこに行くと、

案の定、春山はいた。

バイクなんて見つかったら没収なのに堂々としてんなあ。

尊敬しちゃう。

私は、

「春山!」

と呼んで、春山に近づく。

綺麗な顔はこちらをむいて、

すぐさま顔をしかめた。

こんのやろ。

なんなのよ、その態度!!

私は、フンッと鼻をならして、

「ありがと、」

と、お金を差し出した。

「はぁ?なんの金だよ」

春山はまたもムスリとした顔に。

「パン!」

あーもームカムカする!

「あーいらねいらね、」

春山はホイッと私にお金をなげる。

お金は弧を描いて綺麗に私のところへ飛んできた。

「でも、パン買ってくれたから…そういうわけにはいかないの!」

私はまた投げる。

春山はめんどくさそうにキャッチして、

「バカみてえ。そんな女好かねえや。」

と、また私にかえしてくる。

……。

「なんなの!?」

私みたいな女を好くやつはいないと思うけどさ、そこまで言わなくてもいいじゃん。

私はお金を受け取ると、

ぶどう味のハイチュウだけとりだして、

パン!!

っと、春山に投げつけた。

「は?」

お金なんかやるか!

私はプイっとそっぽを向いて、門に向かって歩く。

あー腹立たしい。

あやは塾だし。

ひとりで帰るか。

とぼとぼと帰り道を歩いてると、

ブルルン、とバイクの音が聞こえる。

はるやま、か。

「おい!」

声がした。

くるりと振り返ると、

春山が私にヘルメットを差し出して、

こっちを見ていた。

……?

「乗れば?ひとりだろ」

春山ははやく、とうながすようにヘルメットを私になげた。

スパン、とキャッチしてヘルメットをかぶる。

「はやくしろ、先生くるだろうが。」

春山は私が乗り込むのを確認して、

私の手を腰にまわした。

……ぐあ。

こーゆーのダメなんだってば。

細くて筋肉質なお腹。

……もーやだ。

意地悪なヤツにドキドキしたくないよ。

ほっぺが熱く、赤くなるのが自分でも分かった。

「くっそみてえに顔赤いな。」

春山はクスッと笑った。

えっ?

「バックミラーから見えてんだよ、なにときめいてんだ。」

ぶっきらぼうな言い方で私に言う。

「ば、ばか!見んくていい!」

私はさっきまでとっていた、ヘルメットを被り、顔を隠した。

「……フッ、あほかい。」

春山、笑った。

変なの。

ときめきなんて、してないよ。

ばあーか、