意地悪なキミと。

「何、来てんだよ、千咲。」

そう言う、春山の声は低かった。

……どく。

なんか、なんだか嫌な予感がする。

「あ、ごめん……」

千咲ちゃん、という子はうつむく。

スルリと、肩から髪がこぼれる。

その動作さえ美しかった。

「はぁ、千咲、俺帰るから。」

春山は靴を履き替えて、出入口の方へ向かう。

あとから、春山と一番仲のいい崎本くんがきて2人で帰っていった。



………………。



いやいや、待てよ。

私と残された千咲ちゃんはどうすれば…。

「え、ぇっと、ち、千咲ちゃん…だよね?」

私は千咲ちゃんに向き直って喋る。

「う、うん。……西園寺 千咲(サイオンジチサキ )です。」

はぅ、名前まで可愛い……。

「千咲ちゃんはどうしたの?今日、」

……もしかして、

だけど、

千咲ちゃんと春山はなにか深い関係なのかなって。

少しだけ気になった。

「あ、…ごめんね、気にしてくれてありがとう。今日は帰ります。」

千咲ちゃんはニコリと戸惑った笑みを浮かべる。

そして、深々と礼をすると、綺麗な顔で綺麗に微笑んで校舎から出ていく。

え、なに。

……モヤモヤ。

やっぱし、元カノ、とか。

そうこうしてるうちにゾロゾロとほかのひとたちも階段をおりて、帰っていく。

私も帰ろう。

今日のことはきになるけど、

すごくすごくきになるけれど、

私が首突っ込むことじゃないしね!

私は靴のつま先をトントン、としてから校舎をでた。