「…………ごめん」
そう言って静かにあゆみの隣から抜けるように部屋を出る。
階段を降りると下にはおばさんがいて、何か話かけられたけど返事できなかった。
おばさんの顔はまともに見れなかった。
どうして?
どうして俺なんだ?
様子がおかしかったのは、全部このせい?
まったく気付かなかった。
そのまま家を出て、ポツポツとひたすら歩く…
気付いたときには、
無意識に歩いてきた僕の足の先には…
あの草原に着いていた。
自分の足で来たくせに、なぜか驚く。
まだ、何事もなかったように
時間が止まったように
二つの家が並んでいた。
でもよく見ると、母さんたちが殺された紗知の家は黄色のテープで玄関の前をくくってある。
もう、随分前の事件なのに。
来月、この二つの家は壊されるらしいと小耳に挟んだ。
今にも、紗知の優しい声が
幼い声が
風に乗って聞こえてくるような気がする
弱い。俺は。


