だが水菜は、あの「恋をすることの意味」を探していた時受けた心の傷が奥深くにまで浸透していた。

 そんな心の傷を空登(青華)は二人で直そうと奮闘する。

 その時、空登自身も人の汚さや醜さと言った場面に出くわす。

 次第に水菜はそんな自分に一生懸命な空登に恋を抱く。

 そしてあの探していた「恋をすることの意味」を少しずつ自分で理解していく。答えはこんなにも近くにあった。水菜はようやく答えにたどり着こうとしていた。

 そんな時

 青華はもう自分の記憶が全て無くなり、自分は消えてしまうことを空登に打ち明ける。

 実は同じ体を共にする内に青華も空登の事を好きになっていた。

 それは空登も同じだった。

 本当は空登が好きなのは青華だった。でも青華の実態はない。

 だから同じ水葉を好きになる事でその想いを誤魔化していた。

 青華から自分は消えてしまう事を知った空登は水菜に、本当の気持ちと自分の中に青華がいつも一緒にいることを打ち明けた。

 水菜はまた大きく傷ついてしまう。

 そんな水菜を見て空登も自分を責め、自分を自分で苦しめていった。それは青華も同じだった。またもとに戻してしまったと。

 もう少しで消えてしまう青華は、空登に自分が募らせていた空登の想いを一気にぶつける。

 そして、ありがとう。と、楽しかったと、最後に自分と同じに命(せい)を受けた水葉の事を「頼む」と言って消えてしまった。

 青華は自分が消えるとき、最後の力をふり絞り、水菜と空登に何かを残して消えていった。そして空登は青華と水葉の記憶を失くしてしまう。今まで3人で一緒に過ごしてきたあの日々を。


 僕は、初めに沙織と二人で描いた小説を加筆し修正した。

 そしてこの物語は最後。エピローグを残すだけとなっていた。


 だがこの僕が書いた、加筆修正した物語が現実になろうとは、その時想いもしなかった。


 僕の描いた小説が現実のものになろうとは……

 
 そのキャンバスに描かれた絵は、次第に歪み消えていく。