ある日の部活中、美術部の顧問である桜庭 (サクラバ)先生が、私達1年にこんなことを言った。
「そろそろ春の定例会に向けて作品を描いてもらうから、一週間後にアイデアスケッチの提出よろしくね。アイデアスケッチで制作に入れそうになったら個人で入ってもらうから。後の詳しいことは先輩達に聞けばわかるよ。」
なるほど、定例会というものがあるのか。
私は真琴さんのところへ行き、定例会のらことについて話を聞こうとした。
「あ〜、定例会ね、もうそんな時期だったっけ…」
そこに秋莉さんが話に入ってきた。
「こらこら真琴、寝るんじゃないよ(苦笑)。
えっと、定例会のことよね?」
「はい、そうです」
秋莉さんが詳しく話してくれるらしい。
話そうとしたところへ、夏目・七瀬・彩も来て、1年全員で話を聞いた。
「定例会はね、年に2回あって、今回ある春と秋なの。参加する高校は、うちの稲羽高校と、色城西高校、英華学園高校、蔵坂高校、北長東高校、王鳳学園高校の6校だよ。定例会では作品の交流、批評会が中心かな。中学校も美術部に入ってた人ならわかると思うんだけど…なんとかわかった?」
「わかりました。教えていただいて、ありがとうございます!」
1年全員はそう秋莉さんにお礼をし、自分の持ち場に戻って制作に入った。
制作に入っていると、夏目が何やら考え事をしているようなので、声をかけてみることにした。
「どうしたの夏目、なんか考え事?」
この問いかけに、夏目は静かに話した。
「あっ明里…いや、今さっき秋莉さんの話で、色城西高校と、英華学園高校が出たなって…」
「そうだけど…その2校に何か気がかりあるの?」
「まあね…色城西高校には中学時代の先輩がいて、英華学園高校には…憧れの人がいるのよ」
夏目の言葉にちょっと驚いた。
彼女には憧れの人がいたことに。
「なるほどわかった。教えてくれてありがと。」
そう彼女に言った後、私は作品の制作を1人黙々と成し遂げるのだった。