家に着いて中へと入った私は、リビングの扉を開けた。


「お帰り」


母が笑顔でそう言った。


「菜美(なみ)お帰り」


続けて父がそう言った。


今日は日曜でお父さんも仕事が休みだった。
もし娘が一回りも違う店長と付き合っていて、更に独身だと偽り騙された挙句、その嫁が突然現れて旦那に近づかないでと言われて、会社にも連絡されてクビになったと言ったらどう思うだろう。


「お母さん、お父さん、ごめんなさいっ」


私は二人の前で頭を深く下げた。


「どうしたの?」

「どうした菜美?」


二人は同時に私に言う。


「仕事……辞めちゃった」


すると二人はどうして?と言わんばかりに驚いていたが、私が今にも泣きそうな顔をしているのがわかったのか父は言った。


「この二年間、菜美は一生懸命に働いていたのはお母さんも、お父さんも知っている。辞めたのには何か理由があるんだろ?だからお母さんもお父さんもそれは聞かない。だけどずっと家に居るわけにもいかないし、バイトでもいいから仕事だけはしなさい。さぁ先にお風呂でもはいってスッキリしたらご飯を食べなさい」


「うん」


父の言葉にまた泣きそうになったが、グッと堪えて着替えを部屋に取りに行くとお風呂に入った。


高校生の頃は特に夢はなかったけど、働き出して店長に出会って恋をして、いつか店長と結婚できたらいいなって、私の小さな夢になっていた。


それがまさか突然、会社はクビになるし、嫁には散々言われてしまい、店長は電話にすら出ない。



この二年間はなんだったんだろう。


私は堪えていた涙が溢れだした。


店長との思い出は、心の奥にしまった。