その日の夕方、午後4時。

静かで穏やかなこの町の、ある一軒家に彼女はいた。





?「料理…………作り過ぎましたでしょうか。
今日という日を、ずっと待ちわびていたので………本当に嬉しくて…………」

〔柚木崎 緑―Yukizaki Midori―〕
(高校2年生)


胸に手を置いて軽く深呼吸をし、跳ね上がる気持ちを抑えた。


?「大丈夫、緑ちゃんが作ってくれた料理なら、いくつあってもあの子達は食べてくれるわよ」

〔蓮水 汐李―Hasumi Shiori―〕
(緑の祖母)


汐「それより、また前髪伸びたんじゃない?少しでも切らない?」


おばあちゃんの言葉に反応して、前髪を触る。


緑「いえ、このくらいの長さが一番私は好きなので、これで大丈夫です」


私の前髪の長さは、鼻のあたりまであって、すっかり目は隠れてしまっている。
単に、人と目を合わして会話をする事が大の苦手だから、という理由ですけど。


汐「……………そういえば、会うのは何年ぶりだったかしら」


緑「前に会ったのは確か、中学2年の頃でしたから………3年、になりますね」


汐「………そう……………仕事の都合でしばらく会えないとは聞いていたけど、こんなにも長くかかるとはね…」


緑「仕方ないですよ。
それに、お二人とも仕事先は海外なのですから」


汐「そうね……………あの子たち、変わっているんだろうか」


緑「どうでしょう、私は変わっていないと思いますよ?」


答えるのに迷いはなく、それよりか、自信があった。