ハッシュハッシュ・イレイザー

「すまない、先に行ってて」

 それだけ言うと、声を掛けられた女の子の許に走り、そして二人だけでどこかへと行ってしまった。

 幸せ一杯だった紫絵里は、またどん底に落とされたようにショックを受け、棒立ちになっていた。

 真理はこの時も冷静だった。

「ちょっと、あなた優介の彼女?」

 声を掛けた女の子の取り巻きの一人が、話しかけてきた。

 派手な化粧で大きく見えるようにした双眸を向け、短いスカートからはスタイルのいい太ももをさらけ出したその女子高生は、紫絵里たちとはかけ離れた世界に住んでいるのが一目でわかる。

 優介の彼女と言われたことであっけにとられてた紫絵里は、意識を取り戻したようにはっとし、その派手な女子高生と向かい合った。

「何か用?」

 彼女と訊かれた部分には敢えて触れず、紫絵里は答えた。 

 対抗意識をもった紫絵里のきつい様子は、メガネを掛けた真面目そうな風貌から想像できなかったのか、声を掛けた方が少し怯んでいた。

「別に喧嘩売ろうとかそういうんじゃないんだ。優介には気をつけなって言いたかっただけなんだ」

「えっ、どういう意味?」