ハッシュハッシュ・イレイザー

 優介と一緒に行動してから、時間が経つのが早く感じられた。

 そして、集合時間がそろそろ近づいてきていた頃を見計らって真理は声を掛けた。

「そろそろ、バスに戻った方がいいんじゃないかな」

 優介も紫絵里も腕時計を見て時間を確認する。

「そうだな、そうするか」

「えっ、まだ早いよ。真理は余裕を持たせ過ぎ、早く戻ったら、なんか損しそう。どうせ、みんなギリギリまで戻ってこないって」

 紫絵里は調子づいていた。

「でも、結構、外れまで来ちゃってるよ」

「そんなに心配なら、真理は先に行ってていいよ」

 紫絵里のその言葉には本心が伴っている。

 真理はひっそりと溜息を吐いた。

「それじゃ、瀬良はギリギリまで遊べばいいよ。真理、行こうか」

 優介が真理と一緒に歩き出すと、紫絵里はこんな展開になるとは思わず、「えっ!」と声を出して驚いた。

「ちょっと、なんでそうなるのよ。待ってよ」

 追いかける紫絵里を愉快だとばかりに優介は笑っていた。

 結局は和気藹々しながら三人が歩いていると、後ろから「優介!」と呼ぶ声が聞こえた。

 優介が振り返れば、そこには違う制服を着た数人の女子達がじっと見ていた。

「優介、どうして連絡くれなかったの?」

 涙目になりながら、茶髪の女の子が訴えている。

 優介は真理と紫絵里の様子を窺い、少し取り乱していた。