ハッシュハッシュ・イレイザー

「まあ、済んでしまったことだから、もういいけどね。俺もとにかく忘れたい」

「ごめん、私が声かけたから余計に嫌な思いさせたかも」

「ううん、そんなことないよ。真理が心配してくれて嬉しかったよ。ありがとう。だけど瀬良は一緒じゃないのか?」

「あっ、紫絵里は、あっちにいるんだけど……」

「これから、二人はどこへ行くつもりだい。よかったら一緒に行動してもいいかな。あんなこと計画されて、あいつらと一緒に行動したくないし、あいつらも俺が怒るのわかってて、逃げてしまったみたいだし」

「もちろん、歓迎だわ。紫絵里も喜ぶと思う」

 真理は優介と肩を並べて歩き出した。

 優介と真理が何かを話しながら徐々に近づいてくるのが視界に入った時、紫絵里は我に返り二人の許へと小走りに駆け寄った。

「二人で何してるの」

 納得いかない顔が露骨に出ていた。

「どうした、瀬良、恐ろしいものを見たような顔して」

「えっ、だって、その」

 しどろもどろになってる紫絵里を優介は面白がり、軽く紫絵里の頭をポンと叩いた。

 すぐさま紫絵里はそれに反応し、氷解したように表情が和らぐと、少しメガネもずり落ちた。

 それを整えると同時に安心感に包まれ、コミュニケーションが取れた事で、ほっとしていた。